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水に浸かった地下神殿へ。首都圏外郭放水路見学ツアーに参加

2019年秋の一連の台風によって、これまで自分がわかっていなかっただけでどれだけの治水が行われていたのかを知った。
国土交通省の洪水防御施設「首都圏外郭放水路」も、その1つだ。


以前から「地下神殿」という通称と印象的な写真で知ってはいたものの、それが一体どのタイミングでどのように活用されているのかということにはてんで興味を持てていなかった。しかし今、その恩恵を噛みしめながら友人たちと見学ツアーに行ってきた。



【行き方】埼玉県春日部市の龍Q館へ

電車を東京から小1時間ほど乗り継ぎ、春日部市にある東武野田線南桜井駅に到着。
何故か東武野田線に東武アーバンパークラインという謎の別称がついていたが、ひとまず気にしないことにした。


南桜井駅から定期的に出る市バスに乗って、首都圏外郭放水路の見学受付がある龍Q館を目指す。
バスに揺られて10分程で建物に到着。建物の側面から庄和排水機場の設備が伺える。

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庄和排水機場、通称「龍Q館」。江戸川に排水するための施設"

バスの本数が少ないため、見学ツアーの開始時間に余裕を持って到着することをおすすめしたい。
また、時間があればあるだけ龍Q館で様々な資料を楽しむことができるので、時間が余って困る、ということもなさそうだ。
バスの時間にうまくあわない場合は、事前にタクシーを呼んでおく方がいい。駅前にはタクシーがほぼいないからだ。

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さすが春日部市のバス。クレヨンしんちゃんラッピング

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駅と龍Q館を繋ぐバス

龍Q館の3F受付で事前に予約していた名前を伝えると、ツアーパスと記念にステッカー&カードが渡された。

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ツアーパスとお土産

ツアーが始まるまでに、首都圏外郭放水路のことを説明する8分程度の動画を見ることができたが、これがとても各所の説明にわかりやすかったので見学ツアーが始まる前に必ず見ておこう。

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実際に水路をどのように水が流れてるかがわかりやすく説明される

ツアーは基本歩き回ることと地下などを歩くため、動きやすく汚れてもいい格好での参加が基本となる。ハイヒールだめ絶対。登山する気持ちでいくのがいいだろう。
荷物は、受付横にロッカーが設置されており無料で預けることができるので、カメラなどの必要なもの以外は全てしまっていくと楽だった。

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無料ロッカー。その横には関東地方整備局の制服撮影セットが用意されている


【コース紹介】神殿コース・施設稼働版

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受付横から見られる首都圏外郭放水路操作室

パネルで全体説明後、まずはポンプ室へ

首都圏外郭放水路見学ツアーには「立坑体験コース」「ポンプ堪能コース」「地下神殿コース」の3コースあり、予約したのは「地下神殿コース」だったのだが、この日は台風20号、21号が過ぎ去った直後ということもあって地下神殿部に水が溜まっており施設が稼働中ということで見学コースが一部変更された。


▼変更前のルート

  1. 龍Q館 展示室
  2. 地下神殿「調圧水槽」
  3. 巨大竪穴「第1立坑」


▼変更されたルート

  1. 龍Q館 展示室
  2. ポンプ室
  3. 地下神殿「調圧水槽」
  4. 巨大竪穴「第1立坑」

※地下神殿部の最下層まで行けないため、地下神殿の時間が短縮された分ポンプ室を見ることができる


まずは、龍Q館1Fにかけられている大きなパネルを見ながらスタッフさんから首都圏外郭放水路の全体図について説明を受けた。

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首都圏外郭放水路のパネル

首都圏外郭放水路は、慢性的な浸水地帯である埼玉県東部地域の浸水被害を軽減することを目的に建設された施設で、中川・倉松川・大落古利根川等の洪水の一部を江戸川に放流できるようになっている。国道16号線の地下50メートルに建設された日本最大級の地下放水路で、その形が龍のような様子から「彩龍の川」といった愛称がつけられているそうだ。


一通り説明を聞いたあと、まずは地下にあるポンプ室へ移動。
ポンプ室はかなり重油の匂いが立ち込めており、気をつけてても具合は悪くなりそうなので苦手な人はマスクを持って行った方がいいだろう。

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ポンプ室の様子。重油の匂いがすごい

少しわかりづらいがポンプに設置された画面から勢いよく水が放流されている様子が伺えた。

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画面に水が流れていく様子が見えた


水に浸かった地下神殿「調圧水槽」へ

そしていよいよ地下神殿へと向かっていく。
本来地下神殿は116段の階段を降り、また最後は上ってこなければならずかなりの肉体労働になるが、今回は水が溜まっており下まで行けないので階段途中の30段目あたりにある作業用通路(キャットウォーク)からの見学となった。

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踊り場の張り紙。降りるのはいいが上がるのがつらそうだ

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オレンジ色のタープが貼ってある作業用通路を歩いて見学

作業用通路は狭いため2手に分かれて見学に。
待っている間は普段は禁止されている階段の踊り場からの撮影が可能となるので、思う存分撮影を楽しむことができた。
踊り場付近の地下神殿は、非常灯の灯が反射し不思議な世界に迷い出てしまったような感覚になる。

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非常灯の色が全体に反射している


撮影をしている間にも見ている間にどんどんと水嵩が減っていき、そのせいで逃げ遅れた多くの魚がピチピチと打ち上げられていた。
こうした魚の死骸や土木は見学ツアーで見る部分は定期的に清掃しているそうだが、それ以外の箇所はブルドーザーを入れて年1回まとめて掃除しているそうだ。

作業用通路をぐるりと歩いていくと、先ほどの踊り場から見た景色とは異なり、奥へ奥へと大きく深く広がる調圧水槽全体を見渡すことができた。

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自然を壊さないための設備、巨大竪穴「第1立坑」へ

地下神殿である「調圧水槽」に水が流れ込んで来る前に、それぞれの川の近くに約70m、内径約30mの立坑がある。
その大きさは、スペースシャトルや本場の自由の女神、浅草の五重塔がすっぽり入る大きさだというから驚きだ。

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立坑のエレベーター

第1から第5まで存在する立坑、純粋に貯水量を上げるために作られているのかと思いきやそれだけではなく、なるべく川から流れ込んだ水をそのまま同じ川に返せるようにしておくことで、川の中の環境を破壊しないようにしている面もあるそうだ。


ということで、江戸川に水を流す庄和排水機場にもっとも近い第1立坑を見学。こちらもこの日は水が入っているため作業用通路からのみの見学だ。
第1立坑は他の立坑と役割が異なり、他の立坑から流れてきた水を調圧水槽に流す役目をもっている。

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本来は約70mもの高さがある。横の穴から調圧水槽に水が流れる

水が入っているのであまり高さを感じなかったが、水が入っていないとき高所恐怖症の人はかなりきついらしい。


案内してくれたスタッフの人の話では、7年ほど勤務しているが調圧水槽や第1立坑がこんなに稼働しているのを見るのは3回目だということで、今年一連の台風がどれだけすさまじかったかを改めて知ることとなった。


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色々説明してくださったスタッフの皆さん、ありがとうございます


【予約方法】特設サイトで事前に予約

首都圏外郭放水路見学ツアーは、事前の予約が必要だ。

予約は1ヶ月先までの申し込みが可能だが、人気なため比較的埋まっている時間帯が多い。


定員50名まで受け付けている「地下神殿コース(1000円)」が比較的予約はとりやすく、「立坑体験コース(3500円)」「ポンプ堪能コース(2500円)」は開催日も限られており定員も20名と少ないためかなりの争奪戦が見込まれる。


コースを申し込んだ後、天気や施設稼働状況に応じて見学ツアーの内容に変更がある場合はメールで連絡がくる。
また公式サイトでもお知らせが出ている場合があるので、心配なときは確認しておこう。

お知らせ | 首都圏外郭放水路