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東京湾に浮かぶ人工島要塞「第二海堡」へ上陸ツアーへ参加。歴史と技術を垣間見る

東京湾の唯一の天然の島といえば猿島だが、その近くに人工島があるのを自分はまったく知らなかった。
許可がなければ立ち入れないその人工島へのツアーが限定で開催されると聞き、即座に申し込んだ。

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東京湾に浮かぶ人工島

今回訪れたのは人工島要塞と呼ばれる「第二海堡」だ。
第二という名前からして第一もあるし第三もある。あった、という方が正しいかもしれない。
これらの人工島がなぜ作られたのかといえば、決して人が住むためではなく戦争のためだった。


その昔鎖国していた日本があっさりと黒船の来襲を許してしまったことを鑑み、日本政府は迎撃に備えて当時の大砲が船に届く位置に要塞を構えることとしたらしい。
ただ第三海堡は関東大震災時に多大な被害を受けてしまったこと、第三海堡が完成した頃には技術の進化によりその位置に大砲を設置する必要がなくなったということで軍事施設からは外されてしまったそうだ。


という話を、第二海堡の上陸ツアーで聞いてきた。
ちなみに東京湾に浮かんでいるが、島の場所的には千葉県らしい。
あのテーマパークといい第二の東京、千葉という立ち位置は鉄板なのか?



第二海堡 上陸ツアーに参加

ツアー当日。
横須賀にある三笠ターミナルに朝8:30に集合。


ツアーの参加には事前に送られてきていた上陸にあたる同意書が必須となっていて、三笠ターミナルにあるチケット窓口で提出しチケットをもらった。

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窓口でもらうチケットとガイドブック

9:00の出発に向け、8:45には船着場の入り口に集合ということで、それまでは写真を撮ったりしてのんびり入り口付近に待機する。

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第二海堡に向けて出発

中規模の船に乗り込み、先頭2Fの甲板席に座っていよいよ島に向かう。片道は30分程度だ。

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この日はあいにくと曇り空で午後から雨予報というかんじであったが、風があったわりには揺れも少なく、快適な船旅だった。

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第二海堡に向かう途中に猿島のすぐ横を走り抜けていくのだが、通常猿島にいく場合には猿島の裏側を見ることはできないのである意味レアな猿島の姿を見ることができる。
この日聞いた話では、ツアーの前日に猿島でイルカの群れが発見されたらしいのだが残念ながら見ることはできなかった。

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猿島の名前のいはくはいろいろあるらしい

道中、ツアーガイドさんが船から見える陸地や海の様子を事細かに説明してくれて、とても楽しい船旅はあっという間に終わり、とうとう第二海堡が見えてきた。

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第二海堡へ上陸

慣れた手つきでぴったりと第二海堡の船着場に止まり、順番に乗客が上陸していく。

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1辺が1mになっている間知石(けんちいし)で船着場付近はかためられている

この日の参加者は40名程度だったかと思われる。
人数が多いので3グループに分けられて、それぞれのチームにガイドが付き、順番に場所をずらしながら案内してもらえた。

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チームごとにガイドさんがついて案内してくれる

船着場から階段を登っていくと見えてきたのはちょうど島の真ん中あたりにある灯台だ。
まぁ見えてきたといっても灯台なので船から見えていたのだが。その灯台の足元についた。

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第二海堡灯台

灯台の足元には大砲台の後や、大砲で狙いを定めるための部屋の残りがポカッとできていた。
説明をしなければ露天風呂とお手洗いの後といわれてもわからないくらいだろう。

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砲台跡地。露天風呂跡地ではない

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灯台から西へ向かっていくとドーンと「国有地につき立ち入り禁止」という看板がたっている。
その向こうには浦賀水道を航路とする大型船が走っている。航路が近く、かなり多くの大型船を見ることができるのもこの第二海堡の楽しさの1つといえるだろう。

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島の西先端には砲台の跡地とあわせて、当時は地下2階であったというレンガ造りの弾薬庫を見ることができた。上の部分は全て崩れてしまったらしい。

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15センチカノン砲があった場所
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地下には弾薬庫があった

こうしたレンガの裏には「どこで作られたか」を示すマークが彫られているものがあるそうなので、島に行った際には探してみてほしい。

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レンガの裏にマークが彫られている
カメラにとって替わられた見張り台

西から東の先端へぐるりと歩くのには10分もかからない。

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東の先には元見張り台だった場所がある。今は遠くまで見通せるカメラが設置されており、誰も使うことはなくなっている。
ここはMr.Childrenの終わりなき旅のMVにも出てきた場所らしい。

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今は使われていない見張り台だったとおもしき場所
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現在活躍中のデバイス

見張り台のある場所からはザーッと太陽電池がしきつめられているのが見通せた。
これは灯台やカメラの電力として活用されているそうだ。

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太陽電池の間にも、砲台の跡地が残されている。

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ちなみにこの島の植物のほとんどは自生のものだそうなのだが、その中で2つだけ人間が持ってきた植物があるそうだ。その2つはサボテンとアロエ。どちらも人間に有用なものとみなされてもってこられたのだろうということ。


第二海堡の資料は実は戦時中に情報漏洩リスクを加味して日本国内のものはほとんど残っておらず、アメリカが調べた資料がほとんどなのだとか。


レンガの壁と昭和の跡

船着場の近くまで戻ってくると、島を囲うようにしたレンガの壁がみえる。
この壁はイギリス積みといって、小さいレンガと幅広のレンガを交互に積むような形にしていること、またセメントを使っているということでかなり頑丈な作りになっている。

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また先ほどの弾薬庫のあった建物あとのレンガと色が違うのは「焼きレンガ」といって、水分にも強いレンガを使っているそうだ。
『ザ!鉄腕!DASH!!』でも取り上げられたことがあるそうだ。

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ずーっと続く壁の途中に、人が入れそうな穴が岩で塞がれている場所がある。
なんでもこの第二海堡は、大砲の拠点として必要なくなった後、しばらくは特に許可もなく出入り自由だったので、軍が作った上部な建物を活用して若者がBBQしたり寝泊りして遊んでいたらしい。再び上陸ができるようになったのは2019年からだ。
ただ管理しているわけでもなく危ないので、遊ばせないように入り口が塞がれたのだとか。なんというか、もったいない話である。

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現在は中に出入りできないようふさがれている

壁の近くの倉庫にも同じ焼きレンガが使われている。

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なおこの倉庫の真横に一般社団法人海上災害防止センターがあるのだが、こちらは国家試験に使われる問題にからむため撮影が禁止となっている。



自然と歴史と船を満喫

島にある建物や自然や歴史、どれもこれも興味深かったが個人的には大型船がひっきりなしに近くを通るのが見てて飽きなかった。
普段こんな直近で大型船を見ることはないので、おそらく1日あの島にいて船を見てても飽きることはないだろう。

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様々な大型船がひっきりなしに通る

残念ながら上陸ツアーは1時間程度で終わるので、帰りの船でも大型船を見て楽しんだ。

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今回申し込みをしたのはWAmazing PlayというツアーWebサービスから。
他にもいくつか第二海堡へのツアーを受け付けているそうで、申し込みできるツアーは第二海堡の公式Webサイトから確認することができる。

ツアーによって料金が異なるが、今回は1名9,980円。船代、ガイド代と考えればお得だとおもう。お土産に上陸記念水ボトルももらえた。

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島の植物も石もゴミも全て持ち帰ってはいけないため、持ち帰りOKなのはこの水だけだ

今回船を見るのがとても個人的に楽しかったので、今度は同じ三笠ターミナルから出ている軍港巡りも行ってみたいところだ。