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アスカという1人の女性のことについてつらつらと【シン・エヴァネタバレ感想】

これはシン・エヴァのネタバレを含む感想です。
まだ見られていない方はご注意を。



シン・エヴァを見終わって感じたことは本当に色々とあるのだが、その中でも自分が好きなアスカというキャラクターについて感じたことをつらつら書いていく。





アスカにとって先に進むための重要なやりとり

シン・エヴァの中で自分が特にアスカにとって大事なことだったのだと感じたのは、アスカがシンジに「なんで私があんたを殴ったのかその理由を考えてみろ」と言ったこと。
もう何もやりたくない考えたくないと俯き何も見ないシンジにご飯を食べさせながら、考えてと伝えたこと。



シンジがそれについて考え、アスカが最後の決戦に行く前に「あの時何も決めなかったから(だから殴った)」とシンジが答えに辿り着いたことで、アスカは納得していたし、これで一つわだかまりを「過去のもの」にすることができたんだなと感じた。



これら流れがなぜアスカにとって大事だったのか。
それは、圧倒的に辛く苦しい1番助けの必要だった時に圧倒的に助けてもらえなかったからだ、好きな人に。





3号機のテストで使徒に侵略されたときにアスカの意識はそれでもゼロではなく、どうしようもない自分の状況に抗いながらも目の前のシンジに助けを求めていたのだろう。


でもシンジは何もしなかった。
なんなら、アスカにシンジを殺させようとした。


シンジはゲンドウに「アスカを殺すくらいなら殺された方がいい」と言っていたが、それを聞いてアスカはどう思ったろうか。
「私だってシンジを殺すよりシンジに殺される方がいいのに、そうやって逃げるのか。助けてくれないのか」と深く深く傷ついたのではないだろうか。
それなのにシンジはアスカを傷つけたことを意識もせず、ゲンドウに怒り散らすばかりで逃げるばかりでまったくアスカに向き合おうとしなかった。
3号機から救出されたぐちゃぐちゃになったアスカのそばで回復を待ってくれようともせずに、もう嫌だと逃げ出すだけで結局自分のことしか本当に考えていないバカでガキだ。




アスカが圧倒的に辛く苦しい状態になったのは、シンジとレイのきもちを尊重した流れの先のことで、そんな自分が好きだと感じたアスカを踏み躙ったのは使徒でもなんでもなく好意を感じてたシンジだったというただの事実。
その事実をシンジが認識したことで、傷は消えないけれど、その傷が過去のものであるとすることは出来るようになったから、決戦前の場でアスカはシンジに「好きだったと思う」と好意を過去のものとして吐き出すことができたんじゃないだろうか。


そしてその時点で過去のものとできるくらい、先に大人になれていたのは、その裏にケンスケの支えがあったからではないかなと感じている。


ケンスケとアスカの関係性

ケンスケとアスカの関係性を考える前にいくつか気になることがある。



ひとつめは何故アスカは村に行けなかったのか。
ふたつめは何故アスカはケンスケの家で裸のような格好で過ごしてたのか。
みっつめは何故アスカは住む側ではなく守る側だと言い切ったのか。



これらを踏まえて以下適当な推論を並べる。



恐らくアスカは村ができ始めの混沌としていたときに、取り締まるような役目をおっていたのではないだろうか。
ルールもモラルもない世界において人間を統率できるのは力でしかない。その力をふるったのがアスカだったのではないだろうか。
それによって村は落ち着いて形を保てるようになったが、力をふるった者として村に行くと村人を怖がらせてしまう可能性もあり、むやみに近寄らないようにしていたのではないだろうか。
だから自分は「住む側ではなく守る側」だと言ったのではないかと、なんとなく勝手におもった。


そして、自分の本意ではないその力をふるって影で心を痛めていたアスカに気がついて寄り添ってくれていたのが、村から少し外れたケンスケの存在だったのではないかなとおもう。


※※追記※※
3回目をみたところでアスカが村に行かない理由は「元々同級生で友達だった委員長があの頃から好きだった人と結婚して子供もいて大人になって家庭を築いている」って状況が、喜ばしくもあり自分の状況を見ると悲しくもなるから、だからその自分では掴めない幸せの形を「守る」と決めた、というのがあったようにも感じた。

あの村のシーンは綾波が居場所を見つけるシーンではあるけど、シンジにとって「同性の同い年の友人達の生き方をみて自分の生き方を振り返る」というシーンでもあるから、アスカにとっても初めてできた「同性の同い年の友達」の存在は絶対的に重要なんだろうなと感じるシーンでもあるよなと。

それがわかってるからこそケンスケの存在が生きるんだろうな。
※※追記終わり※※


アスカが何故ケンスケの家で裸のような格好で過ごしていたのかについて、エロい関係だからという考えもできなくはないが、自分はそうは思えない。
どちらかといえば、アスカが自分自身に「価値がない」と感じていたから、別にどうでもよかったんじゃないだろうか。



シンジがケンスケの家に連れられてきたときに裸のアスカと対面するが、その昔ミサトさんの家でうっかり見てしまったときと反応が大違いなのはシンジだけでなくアスカもである。
シンジが無反応なのは正直どうでもいいが、アスカが「なんか反応したら?」とシンジに自分の身体を見せながらいうシーンは、アスカが自分自身をまるでモノのように扱っているなと悲しくなった。
エヴァの呪縛の影響で人間ではなくなり感情がない、という話もあったとはおもうが、アスカの行動の端々から、彼女が14年前のシンジの行動で傷つき、エヴァパイロットとしての自分しか居場所がなく不本意な力を振るわなければいけなかったというような傷ついた結果の自暴自棄のようなものを感じた。
式波シリーズとして感情をプログラムされているということに気づいてしまったのも、自暴自棄の要因の1つだともおもえる。
だから、ケンスケがアスカの裸について顔を赤らめることなく咎めることなくタオルをかけたのは、これまでに散々アスカが自分をモノとして扱うようなことをしてきたのを見て接してきて、それに対して何も言わずに受け入れてくれただけなんだろうなということ。



ただ村のシーンの時に100%の自暴自棄になっていないのは、ケンスケがそばにいてアスカの拠り所になってくれていたからなのだろう。
ケンスケのそばにいはじめる前のアスカの傷つき度が100だったとしたら、あのアスカは60くらいまでは回復している状態だったんじゃないかな。じゃなければあんなにケンスケに信頼を寄せたりはしなかったはずだ。
そのおかげもあって、シンジにご飯を食べさせながら、自分のおもいをぶつけるくらいの情緒があったんだろう。
シンジの口にご飯をつっこむシーンはすごくすごくアスカの葛藤がみてとれて、14歳の自分と28歳の自分との間で苦しんでいる様子がみていて苦しかった。自分を圧倒的に助けてくれなかったシンジは、それでも好意をもっていた相手で、でもその好意はプログラムされたものだったと考えると行き場がないのに救ってくれなかった事実が本当に悲しいのに、なんもわからないふりしていじけてる目の前のシンジに「いい加減にしろ!気付け!」とぶつけたくなるのはとてもわかる。
まぁ結局最後に回復の一押しはそのシンジによってなされるわけだが、それは後述。




何はともあれそうやって、傷ついたアスカの拠り所になっていたケンスケの存在が、最終的にアスカがずっと求めていた居場所になったというのはアスカ大好き人間な自分からするとアスカがやっと幸せになれそうでよかった、本当によかったと感動するよりほかなかった。
アスカのことをおもうと、アスカのことを幸せにしてくれる人と一緒にいてほしいと心からそうおもう。



ケンスケとアスカが愛とか恋とかの関係なのかで考えると少なくともシンジが家に来ていたあの時点では恋人関係ではないし、アスカにとってそもそも「恋愛感情は信じられないもの(プログラムされている可能性のあるもの・自分を傷つける可能性のあるもの)」として忌むべきものだったとおもうので、信頼をおいているケンスケにそんな嫌悪すべき感情はもったりなんかしなかったはずだ。
もしかしたら自暴自棄になっていたときにアスカから肉体関係を迫った可能性はなくはないけど、恐らくケンスケはそれをいなしたからこそあの信頼関係であり拠り所になっていたのではないかとおもう。
あの時点ではね。



全然関係ないけどレコーディングアプリの「あすけん」からメールが届くたびにそわそわするようになった。



最後に美しいアスカが見られたこと

エヴァからの卒業式で、波打ち際に倒れていたアスカの美しさをみて衝撃を受けなかった人がいるのだろうかいやいない(断言)



身体の成長に追いつかなかった14歳の象徴であった赤いプラグスーツがひきちぎれ、その様子は艶かしいことこの上ないがひきちぎれたことだけでは言い表せない魅力があふれていた。
それは彼女の身体的成長と感情の揺れからくるものだろう。大人になったアスカは本当に本当にきれいだった。



先程アスカは心の傷が60くらいまで回復していたんじゃないかと話したが、最後にシンジと話したことで40くらいまでに回復しているようにみえた。
シンジに「僕も好きだったよ」と逃げずに向き合ってもらえ好意を伝えてもらえたから、最後にアスカを助けにきてくれたから、14年前の傷が少し癒やされたのだろう。28歳のアスカとしてそれを受け取れたのも大きかったように感じる。
傷ついた事実が消えるわけではないので、この先その40くらい残っているものはきれいになくなることはないかもしれないが、ケンスケのそばで過ごすことでなくならなくても、気にせずに過ごすことはできるようになるんじゃないかと、そう思いたい。




1つ気になるのは、最後にケンスケの家にアスカのポッドが着いていたのはシンジが余計なお世話をしたからなのか、アスカの心の内がそのまま願望となって送り届けられたのかどちらなんだろうということ。
無粋なはなしだが、まぁどちらにしてもアスカが幸せになりそうだしそれでいいか。
この先にケンスケとアスカの間に明確な愛情が育まれるのかは2人次第だし、正直どちらでもいい。
ただ明確なのはこれから先にアスカの居場所がケンスケの隣というただそれだけ。
プログラムされた感情(呪縛)から解き放たれて、心象世界で素の状態のアスカが隣にあってほしいと願ったのがケンスケだったわけなので、それ以上の先の未来は好きなように妄想したい。




また余談だが、ケンスケが加持さんみたいな雰囲気があるのはなんとも言い難いよさとなんとも言い難いエゴとが混ざり合ってて個人的には好ましい。
まぁいつまでもアスカに「ああしてほしい、こうしてほしい」とかおもってるバカなガキより、求めるだけでなくそばにいて受け入れて与えてくれる人のがいいよね、わかる。


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