小さい頃から好き嫌いがはげしかったが、そのなかでも和食は食べられるものが多かった。社会人になったいま、色々なものが食べられるようにはなったが、それでも1番好きな料理のカテゴリは和食だし、そしてそれに合う日本酒も恋してやまない。
日本酒を飲むようになってから、日本酒好きな人たちからよい店に連れて行ってもらえることが多くなった。ありがたい話だ。今回いってきた新橋にある酛(もと)という店もその内の1つである。
新橋駅から徒歩3分程度で着くその場所は、しかし入口がとても分かりづらい。建物の隙間にひっそりとある細い階段をのぼってふと右手に目をむけると和風然とした店の入口がある。
のれんをよけて入ると、4席のカウンターと、6席ほどのテーブルで構成されたこじんまりとした店の様子がうかがえる。
普段は夜営業のみだが、土曜や祝日前の日曜などにときたま昼限定の日本酒飲み放題コースというのを提供してくれている。前回訪れた際にまたぜひ来たいと考え、数ヶ月前に予約をいれたのだった。
この酛という店は、恵比寿に最近新店舗をだしたほか新宿や吉祥寺にスタンドバーもあるらしい。まだそちらには行けていないが、行った人のはなしによるととてもいいところらしいので、近々いきたいものである。
この店の飲み放題は、最近よくある冷蔵庫から好きに瓶を取り出す形式ではなく、お料理とタイミングにあわせて「のみたい」とつげると次々と新しい日本酒を出して来てくれる形式だ。
席に座って人がそろったところで最初の一杯を。
最初から日本酒、という人も多いそうだが、まずは最初にビールがのみたい。出て来たのは秋を感じるアサヒの琥珀ビール。なんでも店舗にしか卸していない限定品だそうだ。
そんな秋を感じる飲み物と一緒に最初にだされた品はきのこの茶碗蒸しと鯖の棒寿司。
さてこれの一体どこがきのこなのか、中にきのこが盛りだくさんなのかと一口すくって食べると口の中がきのこだらけだった。写真でみえているこの表面のぷつぷつとしたもの、これがすべてきのこを細かくしてまろやかなソースとあえたもので、これがまたこれ以上ないほどのきのこなのだ。まったくきのこの固形物を食べていないにも関わらず、ここまできのこを感じられる料理なんて初めてだった。きのこ好きにはたまらない。しかもこの中に牛すじが入っていた。うまい……。
ここで最初の日本酒へ。酒のうんちくは聞いたそばから忘れる残念な習性のため、写真をみてわかる人にわかっていただければいいとおもうが、うまい酒である。
そしてお次の品はサラダ。このサラダ、一見普通のなんてことはないサラダのようにみえて、何を隠そう自分はここのこのサラダがサラダのなかで1番好きだ。
前回と今回で唯一料理で共通だったのがこの1品であったことがとてもうれしかった。
葉自体もおいしいが、このうえにかかっている粉チーズ。これがミモレット18ヶ月熟成したもので、これがまた最高に野菜のおいしさをひきたてているし、酒にあう。完璧だ。考えた人は天才なのかもしれない。
そうして料理を楽しむ間に酒の手もどんどんと進む。
うえの酒のしょうゆ皿をみて察しのよい方はお気づきかとおもうが、お次はお待ちかねの刺身である。
個人的に刺身は白身派なので、これが出てきてテンションがあがらないはずもなかった。みるからにぷりぷりとしていておいしそうだ。もう彼らの名前も忘れてしまったが、彼らのおいしさは口の中にいつまでも残っていた。
ああ、日本の魚は本当においしいなぁなんて姿を飲みながらかみしめているところに。
はい、きました。焼いたやつ。これね。おいしくないわけないわけないと思いませんか。だってほら、身のところがこんなにほくっとなってて、あぶらがほどよくのってて、皮がパリッと焼かれてるんですよ。魚が。焼き魚が。おいしくないわけないじゃないですか。
おいしい日本酒と焼き魚が楽しめる幸せってすごい。
おいしくてたのしくて、そろそろ何杯目だかわからなくなってきたところに本日最後の品が。
あー。はいはい、しってるしってる。魚ね、揚げちゃったやつね。わかるわかる。でもなんかいわゆるフライってかんじじゃなくて、うす衣で衣にもしっかり味がついているうえに、中の身も水分を残しつつほわほわになっちゃってるやつね。
くぅぅぅぅ、おいしい……魚おいしい……。
わりと肉の写真を撮ることが多いせいか、肉ばっかり食べていると思われがちだが、魚も食べているし、魚も愛していることをここにしるしておきたい。
飲み放題もそろそろおしまい、というころに出されたのはプレミアムな雰囲気ただようこちら。
箱にはいってるうえに、これがまた最後に味わうにはもってこいないいお味。
こんないい日本酒ばかりがでてきて、絶品の和食がコースでセットで1人6000円なんですから、ごちそうさまでしたまたきます、以外の台詞より適した言葉がみつからない。またお会いしましょう。